書くべきか書かざるべきか

ジャパンメディアネットワークの倒産に関連した ITmedia (旧 ZDNet Japan)の
記事を読んで考えた。

「JMネットと、報道のジレンマ」
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0401/26/news035.html

「技術的にありえないということを言うのは非常に難しい」、と前置きした上で同社の結論は以下のとおりであった。

悩んだ結果、ITmedia編集部では、「編集部として間違いなくサービスを提供できると確信が持てるまで、記事にすることを控える」――という方針をとった。

確かな情報に基づかず報道を行うことはやってはならないことである。一方で、訴訟や批判を恐れて筆を曲げることも良くないことだろう。
表題にあるとおりの「ジレンマ」(二律背反)が批判を受けるリスクと公衆の安全との間で発生する。このケースでは、批判を受けるリスクを重く評価する材料として「確かな情報に基づく報道」という要素が加味されている。

この問題は、いわゆる内部告発公益通報)と似たような倫理問題を抱えていると私は考えている。内部告発にいたるためには告発する内容についての確信が必要になる。当事者が技術的に未熟で内容について確信をもてないのであれば、当然告発ができないわけだが、十分確信しているケースでも良心をおしころすために「私は十分な見識を持っていないし、絶対の確信はもてない」と告発をしないことを正当化することもありうるだろう。

要は、ITmedia 編集部も「確かな情報に基づく報道」を重くみたあまり、公益性を発揮する機会を失ったように思われる。

終わってからなら何とでもいえるのだが、技術的に疑問があるのであれば、周囲の識者に尋ねるなどして裏をとる作業をして「公表するに十分な確信」を得て公開の場に提示してほしかったと思う。おそらく内部告発者が証拠を探すよりは容易なことであると思う。

ITmedia 編集部の論理からすれば、疑わしいサービスを疑わしい、不正は不正であると報道する条件は存在しないことになる。垂れ流し報道をした他社と比較して「みっともないことをしないで済んだ」と言えるほど倫理的に優れていたとは思えない。