人工呼吸装置取り外しの問題

生命倫理ともいえるが、技術者倫理の典型的な例。プロフェッショナルは確固とした意見を持ち、自分の信じる方法を顧客に勧める。そんな印象を受けたが、倫理的には「配慮が足りなかった」のではないだろうか。

たくさんの事件

2005年11月ごろから突如浮上した、マンションの耐震強度計算の偽装。最近では、旅客機の点検放置問題、証券取引所システムのバグ、と新聞ネタには事欠かない。倫理とは個人個人の心構えの問題なのだが、たいていの新聞ネタは個人一人が何とかできる範囲をこ…

誇り高い技術者になろう 工学倫理のススメ ISBN:4815804850

黒田 光太郎/戸田山 和久/伊勢田 哲治 編 名古屋大学出版会 2004年 比較的最近出版された工学倫理(技術倫理と同じ意味だと思う)の本。大学・高専に入学したばかりの人をターゲットにした教科書である。 倫理の教科書というよりは、社会において技術者は…

リスクに関する説明のしかた

『環境リスク論』で知られる中西準子氏のウェブサイトがある。リスクが予想されるときの伝達の仕方について示唆に富む記述があったので、紹介したい。 この初期にとられる措置は、多くの場合、後で考えれば過剰対策である。それは、間違うならば、「リスクな…

選択肢があることは幸福か?

まったく畑違いの領域に思われる基礎研究領域からも技術倫理にかかわる重要な問題を研究している人がいる。 また、最近、インフォームドコンセントという言葉をよく聞きますが、仮に病院で"治療方法を選んで下さい"と言われて選んだとして、望み通りの結果が…

リコールの権限がないことについての倫理問題

アサヒ・コムの記事によると、いわゆるハブ破断事故による死傷事件について、三菱自動車側の被告は無罪を主張するとのこと。以下の引用は 関係者によると、被告・弁護側はこれに対し、「村川元部長は同種事故の多発を認識していなかった」「三木元部員は多発…

顧客情報流出事故

アッカネットワークスから封書が届いた。金券でも入っているのかと中身を改めた自分が情けない。内容は以下のURLに記載されていることと同じであるようだ。http://www.acca.ne.jp/news/20040910.html 氏名、郵便番号、住所、電話番号、申込時連絡用メールア…

リオ宣言

1992年の国連環境開発会議の宣言(リオ宣言)が予防原則の元祖らしい。とりあえずメモ。 In order to protect the environment, the precautionary approach shall be widely applied by States according to their capabilities. Where there are threats o…

人体市場 ISBN:4000054481

L・アンドルーズ D・ネルキン 著 野田亮 野田洋子 訳 岩波書店 2002年 生命倫理を考える上で、「商品化される臓器・細胞・DNA」という副題のついたこの本を読んでおくことは、特に臓器提供を推進する人にとってはその負の側面を見るために、必要なことだとお…

技術倫理とディベートとの関係

ディベートとは、自らの主張を第三者にも納得してもらうために十分な情報収集をすることを含み、さらに相手の立場ならこう出るという予想を元に、反論も用意しておくというかなりタフな知的な営みであることが分かった。 組織や社会においてディベートの手法…

ザ・ディベート ISBN:4480058923

茂木秀昭 著 ちくま新書 2001年 昨年受講した「科学・技術と人間の倫理」という授業では、3つのコースが併走しており、私が参加していない1つのコースでは、学生同士によるディベートを試みていた(id:tshiga:20040120 を参照)。 ディベートにはきちんとし…

リコーグループ社会的責任経営報告書2004

時々であるが、社会的責任経営(Corporate Social Responsibility = CSR)という用語を耳にする(というより目にする)ことがある。CSRをちゃんとやっている会社は業績もよいとかで、CSRに注目した投資ファンドもあるらしい。*1リコーグループでは2004年に初…

自動車のリコール制度

三菱自動車の場合、リコールすべき欠陥についてそれを隠蔽したことが問題になっているが、リコール制度やその限界について復習しておきたい。リコール制度は、昭和44年(1969年)から運輸省の省令で実施されてきたが、法律の裏付けができたのは平成7年(1995…

オムニバス技術者倫理

編集・発行 室蘭工業大学技術者倫理研究会 2004/3/31この本は北大で1月に行われたワークショップ「技術者倫理の構築」に参加した際、発表をされていた室蘭工業大学の鈴木先生にわけてくださったもので非売品。この4月から室蘭工大で教科書として使用されてい…

共有資源の問題

経済学は限られた資源の適切な分配方法を考察する目的で始まったといわれている。実はとても倫理と結びつきの高い学問だと思うのだが、倫理学に興味を持つ経済学の人はあまり少ないようだ。かえって理科系の人が突き詰めて考えているように思われるのが興味…

会社を責める前に

今回の件で三菱をいくらでも非難することができる。でも、三菱という日本が誇るべきブランドがこのように惨めになった原因は、三菱の重役や社員ばかりの責任ではない。現代の日本は「目の前のことを否定し」「さほど悪くないことをした人をリンチし」「一市…

駅のホームのほうが危険だが

自動回転ドアより駅のプラットフォームのほうがよほど危険であり、回転ドア事故の件では騒ぎすぎではないかという意見を見かけた。 実は駅のプラットフォームはきわめて危険であり、実際プラットフォームから転落する危険性は一般に広く認知されている*1し、…

問題の提起

自動車製品のリコールとは? リコール隠しはなぜ行われるか? なぜ欠陥でなく整備不良であるとの結論が出たのか? この問題で良心と会社の方針との間で苦悩した人がいるのか?

医療倫理 ISBN:4326101385

浅井篤 服部健司 大西基義 大西香代子 赤林朗 著 医療に携わる人(倫理学や哲学を学んだ経験もある)が書いた医療倫理に関する本。インフォームド・コンセント、告知、安楽死、延命治療、人工妊娠中絶、倫理委員会など広範な主題を含む本である。インフォー…

行政の調査

国土交通省が都道府県に指示して自動回転ドアについての実態調査を行った。 国土交通省では4月19日に発表されている。 http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/07/070419_.html 私の地元北海道の分は4月15日付けで道内分が公表されている。 http://www.pref.ho…

自己責任論に対するパウエル国務長官の見解

米国国務省のウェブサイトに日本のテレビ局が行ったインタビューが掲載されている。 http://www.state.gov/secretary/rm/31489.htm But even when, because of that risk, they get captured, it doesn't mean we can say, "Well, you took the risk. It's y…

その他の非難

人質が国や国際社会に迷惑をかけた、という論調も一部にあった。ある政治家はかかった費用を計算すべきだと言った。いずれも解放される前の危険な状態がつづいている時期にである。 功利主義的に考えれば、このような議論は人質の返還にまったく役立たないば…

自己責任論の蔓延と他者への不寛容

イラクの人質事件を聞いたとき、私の家内が言った言葉も「でも自分で危ないところにいったんでしょう?」というものだった。電話や郵便で嫌がらせをするほどではなくても、物言わない「自己責任」支持者は相当数に上るのかもしれないと思った。 自己責任論の…

自己責任とは?

戦争状態のイラクで発生した日本人人質事件は技術倫理の問題ではないが、被害者に対して「自己責任」ではないかという非難がなされたことに私は大変違和感を覚えた。 技術倫理でよく言及される「自己決定」や医療倫理における「インフォームド・コンセント」…

社長の供述

この件の報道姿勢については本来の使命である事実を明らかにするというより、責任を問い糾弾する傾向が強かった、という疑問を持っている。ただ、経営者側の「事実を明らかにしない姿勢」が報道側の対応に火をつけてしまった面もあるようだ。 毎日新聞のweb*…

親が悪いのか?

技術倫理の話題ではないが、この事件のケースで子どもを監督しなかった親の責任に言及しているものがあった。エレベータやエスカレータにおいては子どもに対する注意事項が明記されているケースが多く、誰もが注意すると思われるが、自動回転ドアの危険性に…

行政の責任

2004/4/3 追記毎日新聞のWebによると、行政の対応にも「重大な見落とし」があったようである。 回転ドア事故:国交省が危険性を認識 具体策を講じず http://www.mainichi.co.jp/news/selection/20040402k0000m040156000c.html 国土交通省が昨年2月、「回転…

責任はだれに?

2004年3月26日午前11時半ころ、東京都の六本木ヒルズの森タワー2F正面入り口にて6歳の男児が回転ドアにはさまれて死亡する事故があった。http://www.asahi.com/special/doors/情報がいまだ整理されていない中で問題点を抽出するのが難しいが、以下のポイント…

日本医師会の見解

「医療の実践と生命倫理」についての報告 http://www.med.or.jp/nichikara/seirin15.html 日本医師会は、日本の医療に関してもっとも影響力のある団体であるといえる。そこの公式な方針が示されていると思われるので、とりあえずURLの紹介だけだが、じっくり…

効果が実証されない検診はやめるべきか

Asahi.com に興味深いニュースが掲載されていた。検診の効果に疑問が出されていた30歳代の乳がん検診を廃止することになったのだが、強硬な反対意見もあったようだ。「30代の乳がん検診廃止 視触診単独「意味ない」と判断 」 http://www.asahi.com/health/…