リコーグループ社会的責任経営報告書2004

時々であるが、社会的責任経営(Corporate Social Responsibility = CSR)という用語を耳にする(というより目にする)ことがある。CSRをちゃんとやっている会社は業績もよいとかで、CSRに注目した投資ファンドもあるらしい。*1

リコーグループでは2004年に初めて社会的責任経営報告書を刊行した。環境報告書を出している企業はかなりあるが、CSRの報告書を出している会社はまだ少ないと思われる*2。この報告書は、リコーのホームページから請求すると無料で送ってくれる。また、PDF形式のデータとしてダウンロードすることもできる。

リコー・企業の社会的責任のページ
http://www.ricoh.co.jp/about/csr.html

また、リコーグループでは「CSR憲章」というものを策定しており、企業の行動原則を示している。この憲章のもとに「行動規範」が定められている。CSR憲章も行動規範もリコーグループが定義している社会的責任の4つの分野を意識して作られている。

  1. 誠実な企業活動
  2. 環境との調和
  3. 人間尊重
  4. 社会との調和

報告書によると、企業の社会的責任はまだ明確な定義が存在していないらしい。ただ、一般的な企業倫理をこえる範囲の広い概念のようである。安全衛生や法令順守は倫理以前の問題であるし、社会貢献活動は倫理を超えている部分であると思う。

また、環境についてもCSRの中に含めているが、リコーグループでは「環境経営報告書」というものを別に公表している。両者の関係が気になるところだ。もちろん環境経営報告書のほうが歴史がある。

内部告発にかかる対応については「ほっとライン」という相談窓口をリコーのCSR室と弁護士事務所においているようである。また、情報セキュリティも「誠実な企業活動」のひとつとして位置づけられていることが興味深い。

リコーの桜井社長の巻頭言には以下の言葉があった。

企業の継続的成長と発展は、社会の持続的発展なしにはありえません。

また、本文の7ページにおいてはよく似た記述があった。

業績(利益)と対峙する形で社会的責任があるのではなく、両方を共に追求し、目標を達成することが企業活動の基本であると考えています。

CSR投資ファンドに採用されることから見ても、企業の業績と社会的責任は両立可能であるという楽観的な考え方がCSRという考え方の本質のようだ。では、社会が持続的に発展しない状況下で、企業はどう振舞うべきなのか、両方を共に追及してもなお矛盾が起きるときにどうするのか、報告書の中で回答すべきことではないのかもしれないが、気になるところだ。

*1:こっちは社会的責任投資(Social Responsible Investment = SRI)と言うらしいので、CSRとは同じではないかもしれない

*2:以下のURLの記事を見る限り、数社はすでにCSRの洗礼を受けており、報告書があると思われる。http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/special/47/naruhodo108.htm