ザ・ディベート ISBN:4480058923

茂木秀昭 著 ちくま新書 2001年
ザ・ディベート―自己責任時代の思考・表現技術 (ちくま新書)
昨年受講した「科学・技術と人間の倫理」という授業では、3つのコースが併走しており、私が参加していない1つのコースでは、学生同士によるディベートを試みていた(id:tshiga:20040120 を参照)。
ディベートにはきちんとした形式があり、「某テレビ局のニュース番組でのダイオキシン汚染野菜報道被害」についても、限られた時間ながら「テレビ局には責任はない」という側と「テレビ局に責任がある」という側に分かれて立論と反駁(結論と言っていた)が行われた。授業で行われたフォーマットは以下のとおりであった。

肯定側の立論
否定側から肯定側への反論
否定側の立論
肯定側の結論
否定側の結論
参加者による評価

ディベートを目にするのは、このときが初めてであり、参加されていた学生のレベルの高さに驚いたもので、私もディベートの訓練を受けたいと思ったと同時に、大学の初年度の授業としてディベート専門の授業があってもよいくらいであると考えた。それくらい、論理的思考と合意形成のベースになるスキルであり、可能なら必修にすべきだろう。

さて、本の紹介。

この本によると、「二人制競技ディベート」と「略式ディベート」の2種類について述べられており、略式においても結構複雑なフォーマットをしている。

肯定側の立論(2分)
否定側の立論(2分)
肯定側の第一反駁(1分)
否定側の第一反駁(1分)
肯定側の第二反駁(1分)
否定側の第二反駁(1分)
肯定側の結論(1分)
否定側の結論(1分)

本書で非常に参考になるのは、ディベートの種類と立論の形式である。この本によるとディベートには3つの種類がある。

事実ディベート(過去に限らないが事実について議論する)
価値ディベート(主として倫理的な議論になる)
政策ディベート(ある政策をなすべきかについて議論する)

私が体験した授業でのディベートは価値ディベートなんだな、と分かる。ただ、価値ディベートと政策ディベートとの間は結構あいまいで、政策とは価値に基づいて行われるので、結局のところ「立論の基本となる哲学」が一貫していることが大事なのだそうだ。

立論の形式としては主張すべき事柄の性質において、以下のどれかを採用すべしというのである。

問題解決型の議論(何かをやるべき、というスタイル)
制度廃止型の議論(何かをやめるべき、というスタイル)
現状維持型の議論(上記の2つの否定側に用いる)
比較優位型の議論(2つの案のどちらかが優れているという形式)

この類型は組織において何かを行うときにも参考になるのではないだろうか。