医学部の名義貸し問題

いろいろな報道があるが、名義貸しを受けていた病院の言い分もあるこの記事を引用したい。

http://www.asahi.com/national/update/0119/033.html

同病院の事務長(49)は「ルールを知らなかったわけではないが、世間から批判される行為としての認識はなかった」とし、「医師を地方に配分するシステムがないから、地方の病院には医師が集まらない。東北大以外から医師が来ることはあり得ない。医局との連携なくして経営は成り立たない」と話している。

ルール(規定の数の医師がいない病院の診療報酬は減額される)違反を承知していたのは、この病院だけでなく名義を借りていたとされる病院共通の考え方だと思われる。そうでなければ勤務実体のない大学院生に給与を払ったり、非常勤の医師を常勤と偽ることもないからである。
その上で、引用した事務長の発言からは「このルールを守らなくても、医療サービスは低下しないし、お客様(患者)に迷惑がかかるわけではない。むしろルールを守ることで、サービス提供に支障をきたすことになる」というある意味「うそも方便」感覚が見て取れる。
典型的な功利主義の発想だと思う。ただ、ここでの功利主義では健康保険の財源を拠出している加入者全体の利益が考慮されていないようだ。専門家としては、目の前にいない関係者の利益も当然考慮すべきだと思う。

一方、世の中には不正を誘発するような変なルール(法律を含む)があるようで、診療報酬にかかわるこのルールもそのひとつだと思う。牛肉の産地を偽装して国に買い取らせる事件も、変なルールが生んだ同類の事件だろう。

このルールに起因する弊害がはっきりしたのだから、弊害を除去する方策を考えるとか、このルール自体の効果が疑わしいのであれば廃止するなど、再検討が必要なはずである。

以下のリンクでは「厚生労働省が勤務実態を把握する」としているが、罰するよりルールの見直しをするべきではないか。

http://www.asahi.com/national/update/0123/015.html